野猿×ガンマ兄貴。軽く性的表現あり。


たわむれ




 己の胸元で悪戯な笑みを浮かべる子供の顔を眺め、γは眉尻を下げてゆるく吐息をついた。
「……っとに……おら、どけ。野猿」
 ソファに仰向けに寝そべるγの上に、子供は長々と身体を伸ばして乗り上げている。長身の男の胸元に顎を乗せ、野猿は機嫌良く唇を吊り上げた。
「へっへー、やーだね」
「やだじゃねーよ」
「いいだろ!γアニキ」
「顎が刺さってんだよ。いてーだろ」
 苦笑して額を小突けば、野猿はむくれながらも顎の下に手を入れて、これで良いかと伺うような顔付きだ。苦笑を更に濃くしつつ、γの指がゆったりと野猿の髪に伸ばされる。長く伸びた髪に指を差し入れれば、心地よいのか子供は猫の仔のようにうっとりと瞳を細めた。
「アニキー……」
「おう」
「おうじゃねーよ。なあ、やらせてくれよー」
 甘えるようなその声に、γは垂れ気味の目を半眼閉じて唇から溜息を押し出す。柔らかく髪を撫でてやっていた手は、そのまま小さな頭をパシリと叩いた。
「いっつ!」
 叩かれた頭を片手で押さえ、憤慨気味に野猿はγを睨みつける。色の薄い大きな瞳が自分を睨み上げているのを見返し、γは片眉を上げて再び苦笑するしかない。眉間に寄ったかすかな皺が、男臭いその風貌に更に男らしい色気を添えていた。
「サカってんなよ、野猿。あっちの部屋行けばいくらでも女がいるぜ」
「女なんかよかアニキのがいいもん」
 悪びれずに笑いながらそんな事を言う野猿に、γはいささか呆れ顔だ。裸の上半身をぴたりとγにすり寄せて、細い指先は腰骨のあたりを彷徨っている。子供のくせにと鼻を鳴らせば、野猿は顎の下にしいた方の手指でγの乳首を服の上からゆるやかに撫でた。
「なあ、アニキ……」
「ったく。覚えたてのガキはこれだから……」
 何度目になるかわからない苦笑を零し、γはじわりと身に染み込む快楽に唇を舐める。
「覚えたてじゃねーよ!」
 胸の上からガバリと身を起こした野猿に、唇の片端を吊り上げ意地悪く笑いかけ。
「覚えたてだろ」
「ちげ……っ!」
 がなり立てようとする子供の身体を引き寄せ、その耳元に寄せた唇で甘く低く囁く。吐息でさえ、愛撫に変えて。
「……オレとのセックスは」
 違うか?と間近で囁いて、ついでのように薄い唇をちらりと舌先で舐めれば、野猿はすぐにその舌へと吸い付いてきた。貪るように唇を合わせて舌を絡める子供のキスは、まるきりがっついていて余裕の欠片も感じられない。けれど、そのもの慣れない必死さに、ひどく煽られるのも事実で。
「……ん……ハ、ァ……」
 うまく息継ぎさえもできないまま、互いの唾液で濡れた唇を擦り合わせては喰いつく事を繰り返す。野猿の長い髪がγの額に頬に首筋に降り掛かり、くすぐったさと同時に甘い感覚を呼び起こしていく。いつの間にか馬乗りになって両手でγの頭を抱え込んでいる野猿の小さな尻に手を伸ばし、γはゆるゆるとその薄い肉付きを撫で回した。
「ぁ……」
 柔らかく揉みしだけば、野猿は小さな声を零して唇を離す。接吻のせいで赤らんだ頬と濡れた唇を眺め、γは満足げに吐息をついた。
「仕方ねーな……こっちならやってやるぜ?」
 細身のパンツの隙間から指先を肌に忍ばせ、まだ細い骨と薄い肉を辿る。
「んだよ……そっちじゃな、くて」
「うん?」
「アニキ、に……ん……突っ込みてーよぉ」
 甘い吐息。
 情欲に浮かされた瞳。
 そんな状態でどうするつもりかと薄く笑い、γは仕方無さげに溜息をついてみせた。
「……ったく、ホントにサルだな」
「言うなよアニキ……しょーがねーだろ……?」
 腰をγの腹にゆるく擦り付けて快楽を得ながら、野猿は熱に浮かされたような瞳のままに年上の男に唇を尖らせた。切ないような快感がじわりじわりと身体に満ちていく。
 この熱を、どうにかしたい。
「アニキィ……」
「仕方ねーなあ……ったく」
 眉尻を下げ、γは観念したように笑った。

 ―――甘ったれやがって。これだからこいつは……

「おら、奥行くぞ野猿」
「待てねーよ……ここでいいだろ?」
 既に野猿はその気充分で、γの上着の裾から指を忍び込ませている。肋を辿り突起を探すその掌の感触に吐息をもらし、γは細めた瞳ですくい上げるように野猿に視線をやる。
「ばあか。誰か帰って来たらどーすんだ。見た奴がサカッちまうじゃねーか。混ぜていいのか?」
「ダメだ。γアニキはオレのだもん、誰にもやるもんか!」
「おめーのじゃねーよ、ガキ」
 鼻で笑ったγの言葉にむくれ、野猿は噛み付くように唇を合わせる。瞳を閉じぬままに舌を絡ませると、γがその舌を甘く噛んだ。なだめるように、或いはたしなめるように。
 渋々と唇を離し、鼻先が触れるか触れないかの距離で見つめ合えば。
「で、どーすんだ?ん?」
「……ち。しょーがねー」
 唇を尖らせる子供の頭を骨っぽい大きな手でパシリと叩き、γは眉尻を下げて苦笑する。
「生意気言ってんじゃねーの、チビスケ。おら、どけ」
 目の前で揺れる伸びた髪を軽く引っ張り、上からどけと顎で示す。今度こそおとなしく言葉に従った野猿の、未だ成長過程にある細い身体を眺め、γは無意識に唇を指で辿った。

 ―――何が、オレのだ。ホント参るぜ……

 その言葉を思い出し、γはほんの一瞬、色の濃い瞳をまぶたの奥へ隠す。人が見たなら、切ないとさえ言いたくなるような表情で。けれどその事はγ本人さえも自覚のないまま。

 ―――ガキは、始末におえねー

 ソファからゆっくりと立ち上がり、自分を見つめる野猿へと歩み寄る。まだ子供のくせに、どこか雄の匂いのする笑みを浮かべるようになった野猿に苦々しく舌打ちし、γはその身体をひょいと小脇に抱えた。
「ギャア!」
「おら、行くぞ」
「何すんだよアニキ!自分で歩けるつーの!」
「黙ってろ」
 暴れる細い身体を、まるで荷物のように無造作に小脇に抱え、γは奥の別室へと足を向ける。
 まだ、片手で抱えられるほど軽い。
 大人になる日は、まだ先だ。
 この子供が巣立つのなど、まだ当分未来の話。
 無意識の内に、γは己に言い聞かせるようにそんな事を思う。
 ……或いは、そんな日はもうすぐそこまで来ているのかも知れないが。
「お楽しみの時間だぜ、野猿。……鍛えてやるよ」
 奥へと続くドアを開け、脇に抱えた野猿に目をやれば。子供は、ひたすらにまっすぐな視線でγを見つめ、ひどく嬉しそうに笑ってみせた。
 大人になる日は、きっと。
 ……まだ、先だ。


29/MAY/2007 了



γアニキがエロくさかったので、つい妄想が進んだ。反省はしていない。


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