おためし


***綱吉×XANXUS***




「で?それを言う為にここまでくっついて来たのか?ご苦労なこったな」
 押し退けられよろけた綱吉に構わず、ザンザスは長い脚を踏み出しその横をすり抜けた。そのまま奥へと大股に進む男の背中を、綱吉は追う。リビングの形をとる部屋で、バサリ、ソファに上着を投げ出し、男はちらりと綱吉に視線を流した。
「……どこまでくっついて来るつもりだ?」
 用は済んだんだろうが。
 かすかな笑い混じりにそう言って、立ち尽くす子供に再び背を向け、寝室へと続く奥の扉に手を掛ける。開くと同時に室内の照明が淡く灯り、内部の様子が浮かび上がった。綺麗にベッドメイクされた寝台、その陰影が、綱吉の立っている場所からも見て取れる。
 こくり、小さな音を立て、綱吉の喉が鳴った。

 ……済んでなど、いない。
 済んでいるはずが、なかった。

「……済んでないよ、用事」
「ほう?」
 常よりも低い声で呟くように告げられた言葉に、ザンザスは面白そうに片眉を上げてみせる。寝室へと続く扉を開いたままに入り口にもたれかかり、男は腕組みをして綱吉を見つめた。
 ゆるり、紅い瞳が瞬く。
「済んでねぇのか?」
「……うん」
 先ほどまでの腹立ちと情けなさに高揚していた頭の中が、熱さだけをそのままに、欲望に支配されていく。小さく顎を引いて頷きながら、綱吉は頭と身体をじりじりと炙るその熱を感じていた。
 綱吉の琥珀の瞳、その奥に揺らめく炎を認め、ザンザスは目を細めた。柔らかな唇がかすかに開き、あるかなきかの淡い吐息が洩れる。
 その表情に誘い込まれるように、綱吉はふらふらとザンザスの傍へと近づいていく。我知らず手を伸ばし、指先が触れようというところでするりと身をかわされ、ムキになってまた手を伸ばす。
 掴めそうで掴めず、触れられそうで触れられない。身をかわされ、いなされて。

 手が、届かない。

 その事が、綱吉の頭の芯を更に熱くする。
 ようやく捕まえた、そう思って手を伸ばした、その途端。ザンザスの手が逆に綱吉の腕を掴み、綱吉自身の力を利用してその細い身体を引きずり倒した。
「う、わっ……」
 勢い余る形で綱吉が倒れ込んだ先には、綺麗に整えられた広い寝台。ぼす、とうつ伏せに倒され、慌てて跳ね起きようとすれば、背中からザンザスにのし掛かられる。
「……済んでねぇ用事ってのは、何だ……?」



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