ふたりの足の下、枯れた草と落ち葉がサクリサクリと乾いた音を立てている。吐く息だけが白く白く後ろへなびき、ザンザスは時折、眺めるともなしにその行方を目で追った。
ボンゴレ屋敷の奥の森、鬱蒼と樹々が茂るその更に奥には、美しい湖がある。
ザンザスがそんな話を綱吉にして聞かせたのは、しばらく前の事。この広大過ぎるボンゴレ屋敷の敷地内に何があるか、未だに全体像を掴み切れていない綱吉に、そんな場所もあると教えてやったのだ。森だけでなく湖まであるなんて、と半ば呆れていたようではあったが。
その湖へ、今、ふたりで向かっている。
月明かりさえも届かぬ心許ない足元を、小さなランプで照らしながら。森の奥へ奥へと分け入って。
時折、手をつなぎ。
時折、振り返る綱吉と唇を寄せ合い。
うまく距離がつかめずに歯がぶつかったと言って、子供のように笑い合う。
――何やってんだ、オレ達は……
そう思いはしても、それがひどく楽しく微笑ましい。胸の奥がじんわりと温かくて、くすぐったくてならないのだ。
「おい」
「ん?何?」
声を掛けるとくるりと振り向き、丸く大きな瞳がザンザスを見上げる。小さな鼻先が赤くなっているのがランプに照らされ、なんだかそれがザンザスの胸を疼かせた。
「……この先は足元が危ねぇ。気を付けろ」
ぶっきらぼうにそう言うと、綱吉はふわりと微笑んでみせた。我ながら柄にもない事を言ったと、ザンザスの眉間にしわが寄る。それを気にも留めず、綱吉は微笑んだままに小首を傾げ。
「うん、ありがと」
そして、片手を差し出して来る。手袋越し、互いに手と手を握り合う。何かを確かめるように、綱吉は握った手に力を込めて。ザンザスの顔を見上げ、嬉しげに笑った。
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