「γ、驚くかしら」
「驚くでしょうね。あの場所にいる事を、知られていないと思っているだろうから」
そんなところが抜けている、とは付け加えずに。
……そんな抜けているところも好ましい、とは。心の奥底だけで続けて。
「……怒らないでしょうか、お仕事の邪魔をしてしまって。なんだか心配になってきました」
急に不安になったように立ち止まったユニの、少女らしい細い背中に手を置いて。
「怒るわけないでしょう。照れはするかもしれませんが」
常よりも柔らかな声を出し、その背を押してやる。
「……そうですよね」
「あれは、優しい男です」
「はい、知っています」
幻騎士の言葉に、ほんの少しはにかむように瞳を伏せ、ユニが微笑んだ。その頬がほんのわずか朱に染まったのを見て取り、幻騎士は我知らず胸の奥が疼くのを覚える。
――優しい男、か……
そう。誰もかれもがおまえに夢中だな、γ……。
嫉妬、というものとは少し違う、どうにもやるせない感情が胸の奥に渦を巻いた。
そんな男の身体を、誰にも……本人にさえも知られる事なく我がものにしている事実は、どこまでも暗く呪わしく。けれど同じように消し去り難い喜びがある。
……あれから既に幾度も、あんな夜を過ごしていた。
やはり、朝目覚めたγには定かな記憶はないらしい。肉体の違和感も、心配したほどではなさそうだった。
そうなれば、一度手に入れた肉体にまた手を伸ばしたくなるのは致し方なく。機会を得ると幻騎士は、幻術で囲った室内でγの身体をむさぼっていた。
……けれど、ここしばらくの、γの様子が。
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